サイレンススズカは、かつてJRAに所属した日本の競走馬である。
影をも踏ませぬ大逃げで他馬を圧倒するスタイルで、
「最速の機能美」「異次元の逃亡者」等の異名を持つ。
| 性別 | 牡 |
| 毛色 | 栗毛 |
| 生年月日 | 1994年5月1日 |
| 現役年 | 1997年-1998年 |
| 没年月日 | 1998年11月1日 |
| 父 | サンデーサイレンス |
| 母 | ワキア |
| 母の父 | ミスワキ |
| 生涯成績 | 16戦9勝 |
| 獲得賞金(国内) | 4億5598万4000円 |
| 主な勝ち鞍 | 98'宝塚記念(GI) |
競走馬として
3歳(当時の馬齢表記で4歳)の2月にデビュー。
新馬戦を7馬身差で圧勝し、素質の片鱗を見せつけたが、
2戦目の弥生賞(G��)ではスタート前にゲートで騎手を振り落としてコースに出てしまい、
ペナルティとして大外発走となった挙げ句10馬身差の出遅れ。更に騎手の手綱も折り合いも無視し暴走、8着惨敗の憂き目を見る。
結局この年はこういった気性難などに悩まされ、重賞では掲示板に一度乗るのみに終わる。
香港カップ(G��)にて自ら直訴しコンビを組んだ武豊は逃げの戦法に活路を見出し、
以降主戦騎手を務めることとなる。
明けて4歳(旧5歳)となってからは当馬にとって長すぎず短すぎない1800mのレースに狙いを絞り3連勝。
走るごとに課題を克服し、2000mの金鯱賞(G��)でも1分57秒8のレコード。陣営も「負けるなんて考えられない」と自信を持った状態であった。
その後最大目標である天皇賞(秋)へ向けて放牧に出される予定であったが、宝塚記念(GI)のファン投票で6位に選出されたことで急遽出走を決定。
エアグルーヴに騎乗した武に代わり南井克巳へ乗り替わりとなったこと、2200mの距離不安から3倍近いオッズとなったものの1番人気に支持され、
レースでは南井の好騎乗もあり逃げ切り勝ち、GI初制覇を果たした。
秋の初戦は毎日王冠(G��)を選択。
ここには1歳下の世代の外国産馬であるエルコンドルパサーとグラスワンダーが参戦し、「3強対決」の様相を呈した。
59kgの斤量を背負いながらも1.4倍の1番人気に支持されたサイレンススズカは600mを34秒6、1000mを57秒7のハイペースで逃げ、
4コーナーで息を入れたあと直線で再加速し、捉えにかかったエルコンドルパサーを2馬身以上引き離し勝利した。
そして最大目標である天皇賞(秋)へ出走。1.2倍の圧倒的1番人気に支持され、更に逃げ馬に有利な1枠1番。誰もがサイレンススズカの勝利を疑わず、「どう勝つのか」という点に注目が集まっていた。
レース当日。
レースでは早々と先頭に立ち前半1000mを57秒4のオーバーペースで逃げを打ち、どの馬も競り掛けなかった結果3コーナー時点で10馬身ほどの差をつけていた。
観客の誰もが勝利を確信したその瞬間、悲劇は起こった。
『ああっとサイレンススズカ！サイレンススズカに故障発生です！何という事だ！４コーナーを迎える事なくレースを終えた武豊！沈黙の日曜日……！』
次々と後続馬に交わされていくサイレンススズカ。ようやく異変に気付いた大観衆からも悲鳴が上がった。
3度の屈腱炎から立ち直り、7歳にしてGI戴冠となったオフサイドトラップの勝利を、果たしてどれだけのファンが見ていただろうか。現地は静まり返り、皆一様に第4コーナー凝視していた。
ファンの祈りも虚しく、その日のうちに予後不良の診断がなされ、安楽死の処置が取られた。
武豊とサイレンススズカ
前述の通り、武豊は自ら志願してサイレンススズカの主戦騎手となった。「騎手は依頼を待つもの」という彼のポリシーを曲げてるほど、サイレンススズカという馬に入れ込んでいたという。
このような思い入れもあり同馬の死後の落胆ぶりは相当なもので、
ワインをあおり続け泥酔する様子が一般人に目撃されたり、斜行で騎乗停止を食らうなどらしくない言動が続いた。
翌年の天皇賞(秋)をスペシャルウィークで勝利した際には「スズカが背中を押してくれた」と語り、
「ディープインパクトに勝てるとしたらサイレンススズカ」
「全盛期のナリタブライアン・トウカイテイオーを含めた古今東西の名馬を集めても勝てる」
と称するなど、彼がどれだけサイレンススズカに可能性、未来を見出し、そしてそれが失われたことに憂いているかを物語っている。
今でも武にとってサイレンススズカの話題はデリケートな部分であり、
近年の取材においてもその傷口が未だに生々しくあることが伺える。
どうでもいいけど
筆者は未だに98年の天皇賞(秋)の動画を直視できていません。
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